
トルコからの手紙
サッチモ さん

2025/12/18 投稿
大掃除だ、断捨離だ、終活だ、と一年で一番片付け欲の高まる2025年の年末、
私は手紙の整理をしていました。
すると、引き出しの底から出てきた英語の手紙。
それは、30年前にトルコから来た手紙の数々でした。
30年前、私と友人は、大学の卒業旅行でトルコに行きました。
当時は気ままな学生生活だったので、
往復の航空券と初日のホテルだけを予約。
行き当たりばったりの旅でした。
イスタンブールではエキゾチックなモスクを訪ね、
奇岩がそびえるカッパドキアでは、異次元な風景を満喫。
そして、友人と私は残りの1泊を、
どこにしようかとガイドブックを眺めていました。
「サフランボルはどう?」「聞いたことないな」「古い町並みがあるらしいよ」
私達は、知らないところに行くのもおもしろそう、
ということで「サフランボル」に行く事にしました。
(帰国後の1994年、サフランボルはユネスコの世界遺産に認定されたそうです)
トルコの人達は当時から親日的でしたが、
サフランボルの人達はそれに輪をかけて親切な人達でした。
トルコ人の親切には、
自分の商売に結びつけた親切(特に有名観光地)と、
何の利害もない人から受ける純粋な親切があったように思います。
サフランボルの人達は後者の人達でした。
日本からやってきた私達を、
お菓子屋のおじいちゃんが夕食に招待してくれたり、
日本から来てくれたんだから、
ということでバスの運転手さんがバス代を受け取らなかったり、
ということもありました。
「あ~、なんていい人達なんだ~」と油断しきった私達は、
日没後、街を抜けて丘へ散歩に行きました。
すると、どこからか、銃を持った男性達が駆け寄ってきて、
私達を取り囲むではないですか。
相手の顔もよく見えない暗闇の中、
「お前達は誰だ?」とその中の一人が聞きました。
「日本人の観光客です」私は突然の出来事にドキドキしながらそう答えました。
「君たちは日本人なのか・・・なら問題ないじゃないか!」
そう言うと、彼らは笑顔になり、空気が和らいだのです。
彼らは地域を見回っている警察官のようでした。
今なら、旅先で親しくなった人とは、
ラインやSNSで連絡先を交換するのでしょうが、
私が旅をしていた頃は、個人情報なんのその、
住所どころか、電話番号まで交換していました。
もちろん、サフランボルのおまわりさん達とも。
その手紙が、30年の月日を経て出てきたのでした。
当時は辞書をめくりながら英語で手紙を書き、
エアメールを出し、今思えば結構な労力をかけて手紙を書いていたものです。
手紙のやりとりは楽しくて、返事が来たら嬉しくて、
今も大好きなサフランボルでこの友人達ががんばっているんだと思うと、
その後、新卒で入社した仕事の大変さも薄れるようでした。
そんな当時の気持ちも思い出して、30年経った今でも幸せな気持ちです。
私はなつかしい手紙を、そっともとの引き出しに戻したのでした。

サフランボルは、黒海から約50km内陸へ入った険しい山々の間にある小都市です。空港はないので訪れる際は陸路のみとなります。私達はバスで行きました。街には土壁に木の窓枠が並んだ独特の木造家屋が連なっており、絵本の中のような世界が広がっています。メジャーなトルコ観光地も良いですが、昔の面影が残るサフランボルもぜひ訪れてみて欲しいです。








