小高い丘の上のレストラン
banana さん
2023/09/21 投稿
数年前の8月、まだコロナもなく、
成田空港の出発ロビーが混雑していた頃。
帰省のためフィレンツェへ向かった。
フィレンツェは夫の実家があり、
コロナ前は毎年この時季に帰省していた。
実家に着くと年老いた両親が温かく迎えてくれた。
週末にはマリア様の祝日ということで義兄の運転で、
小高い丘の上のレストランを目指した。
途中、ボルゲリ(詩人の町)に立ち寄った。
ここは数分で町を一周できてしまうほど小さな町で、
国内外からの観光客が多く、
小さな町の中はお土産屋とトラットリアが軒を連ねていた。
観光のための町だと思っていたが、
小学校もあり人々が普通に暮らす町であることに驚いた。
長閑な雰囲気、まるでおとぎ話に出てくるような町。
心を鷲掴みにされたまま、いよいよ糸杉の小道を抜けてレストランへ。
この糸杉の小道にも心を奪われながら、
到着したのはロカンダ・デッライオンチーノ。
このレストランはトスカーナの小高い丘の上にあり、
景観が素晴らしい。
案内された席から眺める景色は涙がでるほど美しい。
スズメバチが室内に入り込み、一時パニックになったが、
そこも含めて自然の中での食事を楽しむための準備はOK。
アラカルトでアンティパストとプリーモをいただく。
どの料理もハズれなく美味しい! この日いただいたのはコレ!
★アンティパスト・ミスト
★イノシシソースのパッパルデッレ
★イチゴとチョコレートのジェラート
★エスプレッソ
ワインはこのレストランの農園で作っているものを出してくれた。
ソムリエが大きなワインボトルをあけてテイスティング。
デキャンタに注がれたワインは各テーブルに配られた。
みんなで乾杯! ここで3時間ほど過ごしフィレンツェに戻った。
楽しい時間であった。
「また来年会おう!」と言って別れたまま、
その翌年からコロナで帰省が叶わず、
今年、ようやく帰省できたのは、義父の葬儀のためだった。
料理好きだった義父。
今年も義父と一緒に食料品の買い出しに行ったり、
料理を作ったり、美味しいものを食べに行きたかった。
それが叶わなかったことが残念でならない。
ずっと息子の帰りを待っていた義父。
いいお義父さんだった。
義父のレシピを受け継いだ息子は、
教室でイタリア好きの生徒さんたちに料理を伝承している。
義父の思い出はあの日の思い出と共に
きらきらと心の中で輝き続けている。
もう会うことはできないけれど、
いつまでも料理という形で残る義父の生きた証。
地元の人が通っている食堂に行くと、彼等が食している普段の味に出会うことができるかも!