杭州小籠包店物語:北京のある田舎町の風景
みかこんこん さん
2023/12/19 投稿
私は2021年9月に北京のある大学に入学したものの、
コロナ禍の影響で渡航が実現したのは約2年遅れの2023年4月末だった。
以来、筆者は北京の郊外で、
たった一人の日本人学生として留学生活をスタートさせ、
七転八倒の日々を送っている。
今日は、そんな筆者が大学に程近い大衆食堂で出会った、
ご夫婦のエピソードを共有したい。
最近の北京は11月を目前に控え、
肌寒くなってきたが、
今回は北京の片田舎の学生街で小籠包店を営むご夫婦の話をお届けしたい。
お二人の出身地が浙江省なので、杭州小籠包と謳っているそうだ。
私が彼らに出会ったのは、今年の5月頭のことだ。
大学の北門から徒歩2分。
店内には4人掛けのテーブルが3席とこぢんまりとした店構えだが、
「杭州」の二文字が不安な筆者の心を捕らえた。
杭州は筆者の学部生時代の交換留学先だったのだ。
ふらっと一人で店に入る。
「何にする?」
気さくな女将さんの声。
その店はとても小綺麗とは言えないが、
食事時には学生や周辺企業で働く人で満席になる。
見知らぬ人と相席になることも多く、
実際にそこで知り合った知人も何人かいる。
名前も知らない人と他愛もない挨拶を交わし、顔見知りになっていく。
この店は、よい意味で筆者と現地の人々を繋ぐプラットフォームとなってくれた。
相席の文化は、中国ならではのよさだと感じる。
店の魅力は、何と言ってもご夫婦の人柄だ。
朝5時半~夜8時まで大型連休以外は毎日営業している。
そのため、店が休みだと、ご夫婦の無事を心配する常連客も少なくない。
ぶっきらぼうだが優しいご主人と
元気溌剌とした女将さんの存在は、
この界隈の人々にとって、お父ちゃんとお母ちゃんのような存在だと言える。
7月11日、夜8時。「早くお入り。今日はどこか遊びに行ったのかい?」と女将さん。
8月11日、夜7時半。その日は土砂降り。
早めに閉店準備をしていたところへ
「私のことはいいから、早く帰って。」と筆者。
対して、「バカな子だね。さあ、何にする?」と女将さん。
思わずジーンとしたあの夜のことは忘れない。
10月24日、昼時。近くの工場に勤める工員と相席に。
「彼は日本人だから、日本語で話しな。」と女将さん。
明らかに嘘だと分かる冗談を言ってくるあたりが、お茶目で愛おしい。
筆者が彼らの店に足繁く通うのは、居心地がよいからである。
もはや筆者は娘のような感覚で一時を彼らとともに過ごし、栄養を補給する。
これも長期滞在だからこそ味わえる醍醐味の一つだろう。
北京で食した杭州小籠包。
不安で一人泣いたあの日のことも、
ご夫婦の優しさに触れて安堵したあの日のことも、
どれも「思い出の味」として筆者の脳裏に刻まれたことは言うまでもない。
有難う、北京のお父ちゃん、お母ちゃん。
中国で外出する際は、スマホと充電器を忘れずに:近年の中国ではデジタル化が加速度的に高まっており、2023年12月現在の北京では、電車もバスもタクシーも、飲食店やショッピングモール、大学の学生食堂などでも、日常のいたるところで電子決済が採用されています。現地の若者は、スマホと充電器のみを持って外出するのが一般的です。しかし、スマホ一極集中のリスクも日本の比ではないため、中国ではより意識的にスマホは肌身離さず、充電器も忘れずに持参するのが合理的だと言えそうです。