フランスにてメドックマラソン参加
としびっちさん
2019/10/21 投稿
フランスのボルドーで毎年開催されるメドックマラソンは、参加者が毎年のテーマに合わせて仮装して参加し、エイドではワインが飲めることで有名な大会。
この大会に伴走者として一緒に参加してくれないかと、オーストラリア在住の視覚障害のある友人から連絡があったのが、昨年11月のこと。
私はウルトラマラソンランナーであり、タイムを考えなければフルマラソン完走は出来るが、伴走の経験はない。
友人はマラソン未経験であり、視覚障害のために一人で自由に走ることは容易ではない。
本来なら障害者と伴走者の息を合わせるためにも一緒に走ってみることは不可欠のはずだが、何しろ私は日本で彼女はオーストラリア在住だから合同練習すら難しい。
さて、どうしたものか?!
とにかく家の庭でもどこでも構わないので、安全を確認した上で一定のペースで走り続ける練習を続けてもらいいつつ、伴走者が着いてくれるランニングサークルを見つけてそこの練習に積極的に参加するよう指示。
また6月に彼女が来日した際には、初の合同練習として雨の中、皇居の周りを2周。
伴走者として初めて一緒に走ったが、思ったよりうまく走れたと感じたし、彼女自身はこの時が初の10kmラン。
翌日は筋肉痛に襲われたようで、少々心配になる。
彼女にとっては初マラソンになるので、ややこしいことは抜きにして、とにかく一定のペースで走り続けることを意識して自主練に励んでもらった。
本番の2週間前に再び来日した彼女と、5日間ほど10km一緒に走ってみた。
あちこち痛いと言うのが心配だったし、直前まで走って疲れを残してもいけないので、直前は体調とペースを整えるために毎日一緒にお散歩(笑)
本番が近づき、一緒に渡仏。
安い航空券を探してベトナム航空を選んだため、ハノイまで5時間、そこからパリまで12時間。ヨーロッパは遠いね。。。
パリで2泊、彼女の希望でルルドまで足を延ばして1泊。
そしていよいよボルドー入り。
自分の初マラソンを思い出すと、レーズ直後から筋肉痛に関節痛で大変なことになり、翌日以降も身体がきつかった記憶があるので、彼女がどうなっちゃうのか結構心配だったのだが、不安にさせても仕方がないので何も言わずに過ごした(笑)
ただし、今だから語れることだが、途中で彼女が動けなくなった場合、どこでどうリタイヤするか、誰かに彼女を預けて自分だけでもゴールするか、一緒にリタイヤするか、実は結構いろいろ一人で悩んでいたのである。
本音では、せっかくフランスまで行き、しかも彼女にとっては初マラソン、私は初伴走、二人そろって初メドックマラソンであるから、少々厳しい状況に陥っても何とか彼女をゴールまで引っ張っていきたいと考えていたが・・・
本番当日、食事もよく食べたし、出るモノもよく出て体調はいい感じ!
そしてスタートの時間! あれっ、時間が過ぎても何故かスタートする気配がない(^^ゞ
若干ユルイ感じでレースは始まり、数分後にゆるゆると列が動き出す。
普段なら自分の足元と前だけを見ていればいいのだが、今回の私は二人分の安全を確認しながら進まなければいけない。
周囲に大勢のランナーがいる状況は、東京での合同練習とはだいぶイメージが違う。
集団で動いていると、BLINDというビブスの文字などなかなか目に入らないようで、周囲のランナーがぶつかってきたりして怖い。
集団の中でゆっくり進み、途中のエイドではちょっとワインをいただいたりしているうちに、徐々に集団がバラけてくる。
沿道の応援者と彼女をハイタッチさせたり、ブドウ畑やシャトー、コースの様子を説明しながら、ゆっくりだけどいいペースで走る。
10kmを通過、20kmを通過。
少しずつ彼女に疲労が溜まってきているのはわかったが、ゆっくりペースの中で中盤からあまり歩きを入れてしまうと制限時間が迫ってきてしまう。
いろいろな話をして気を紛らわせたり気分を変えたりしながら、とにかくイーブンペースで進む。
この辺りから若干の上り坂もちょっと厳しくなってくる。
30kmを通過。
自分の初マラソンでは、この辺りが一番苦しかった記憶があるが、彼女はペースもあまり落ちずそれなりに走り続けている。すげえなぁ。
35kmも淡々と通過。時計を見ると、まだ制限時間には余裕がある。
このまま進めれば完走できる!
ビブスにローマ字で名前を入れてあり、それを見たランナーが頑張れって彼女の名前を呼んで声をかけてくれる。嬉しいね。
中には伴走者である4私にも声をかけてくれる方がいて、有難いことだ。
残り5kmあたりから彼女のペースが落ちてきたが、ここまでくれば少々ダメージがあってもゴールまでは行けると確信できたので、お互いの手に握っているロープを少し引っ張って先へ進めてやる。
あと1km走ったらスピードを落とそうか、次のエイドには牡蠣があるよ、最後にもう一口ワイン飲んでいこうかなどと、何とか気を紛らわせながら先に進む。
ゴールまで残り2km、私も疲れてきた(笑)
最後、頑張って走る。
ゴールが見えてきた。彼女には見えないので、大声でゴールが見えてきたことを伝えてやる。
視覚障害者には「もうちょっとでゴールだよ」と言っても、どれくらいでゴールだかわからない。
本当はあと何メートルって言ってやるべきなのだが、私にだって細かい距離はわからない。
仕方がないので、あとちょっとを連発して引っ張る。
あとちょっと、あとちょっと!
あと10m! 一緒に手を挙げてゴールしよう!
あとちょっと!
ゴーーーール!! 5時間58分!!!
制限時間は6時間半だが、6時間を切ってゴールまで連れてくることができた。 ホントよかった!
ゴール後はビールにワイン、飲み放題食べ放題(笑) 酔っぱらったわ。。。
翌日、彼女は若干ロボットのようであったがわりと元気で、一緒にボルドーの街を散策。
ボルドーにもう一泊してパリに戻り、さらに一泊。 最後の朝メシを一緒に食べて、彼女を空港まで送る。
彼女も一旦日本に帰るので一緒に帰ればいいのだが、私は折角フランスまで来たので、ここから10日ほど一人旅!
障害者である彼女を空港職員に引き渡して、私の今回の旅の任務はすべて完了!
ケガもなく、二人が喧嘩したり雰囲気が悪くなることまなく、初マラソン・初伴走・初メドックマラソンを制限時間内に完走することができ、本当によかった!
次は二人でどの大会に出るか?! 夢は膨らむよ(笑)
●コメント
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【 広報チーム さいとぅ さん】
これは壮大なエピソードでした!
二人三脚でのゴールは感動でしたでしょうね。
お二人ともお疲れさまでした!