2年前のわたしへ|みんなの旅話

みんなの旅話~ほっこりアルバム~

2年前のわたしへ

まろにーさん

2019/12/19 投稿

 

6年ぶりの海外へ飛び出した。
今回は、生まれて初めての一人での海外滞在だ。
出国も不安でたまらなく、搭乗ゲートに行く間際は飴すら喉を通らず、見送りに来た母親が私を見送る姿に柄にもなく涙が止まらなくなった。
選んだ先はカナダ。 小さな港町。到着した季節は夏だったから、カラッとした暑さに湿気の多い日本との違いを感じた。
フェリーから見える海の輝き、ロブスターが旬で、過ごしやすい夏はあっという間に過ぎていった。

3ヶ月もすると、結局は語学力の問題ではなくて、言葉が変わっても自分の内面こそがスムーズなコミュニケーションには最も重要ななのではないかと気付いて、苦しくなっていた。
日本語ではかなりオブラートに包んだ表現を多用しながら会話していたことに気がついた。
そういうオブラートが使えなくて、気持ちがむき出しになる表現を使わざるを得ない自分に恐怖と違和感を感じていた。
要は悲しいかな、こんな異国の地で自分の性格の悪さに気がついてしまったのだ。
さらに、日本人のいない小さな街だからこその退屈さを感じた。一番苦しかった時期である。

自分を表現しきれない会話のせいで溜まっていくもどかしさ、不安、憂鬱から逃げるように町の図書館で小説を読むようになった。
Tim Hortonsのコーヒーがお供になった。
もう少し大きな町へ行こうか。それともここでもう少し頑張るか。私は揺れていた。
移動するのは逃げのような気もする。

そんな時、まるで母親のようにわたしのことを気にかけてくれ、色んなことに誘い出してくれる友人ができた。
私とは一回り以上年上だった。旦那さんのサポートをしながら、三人の子育てをしていた。
毎週、自宅で手作りのランチをご馳走してくれた。その人の友人にも紹介してくれ、次々と知り合いが増えていった。
私は自分の気持ちを全て伝えられていないのに、言葉では伝わりきっていないはずなのに、なんでこんなに優しく接してくれるのか不思議だった。

生活が落ち着いて、自分はこのままどうしていくのかを考えた時に、私は日本に帰りたいと思った。
外国人としての壁を越えるためにここで根を張って踏ん張ろうとはどうしても思えなかった。
悔しいけど、滞在時間の限られてる今の私にできるのはここまでだと受け入れた。
その人は、本当はあまりこの国に来ることに気は進まなかったけれど、あなたに会えたから意味があったと思うと、最後に帰国を決めた私に教えてくれた。
言葉は心を超えないと歌ったあの歌詞は人間である限り真理なのかもなあと、私は感じた。
そして、まだ帰国しなくても良かったのかなと自分の急いだ決断を少し後悔した。

帰国してから、楽しかった?と色んな人によく聞かれる。
楽しかったこともたくさんあったけれど、これからの人生で人のためにもっと自分の活かし方を考えて、実践していこうと思えたことが何よりの収穫であった。
その気になればどこでも生きていけるし、どこにでも行ける。
色んな見方があると思うけれど、この感覚を手に入れたことが私の人生にとってとても重要なものになることを私は確信している。
でも、私はやっぱり感謝の気持ちも、感激している様も、後悔しないようにもっと隅々まで表現できる術を身につけていきたいから、第二言語学習者である限り、学びは終わらないのである。

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旅トクアドバイス

カナダでワーホリというと大都市に行かれる方が多いと思います。田舎町はネイティブばかりですが、そこに入っていくにはやはりそれなりの神経の図太さは必要です。ただ、ネイティブの形成する英語圏での生活を垣間見れたことはすごく意味がありました。

 

【 広報チーム さいとぅ さん】

まるで小説を読んでいるような感覚でまろにーさんの文書に引き込まれてしまいました!
素敵な出会いがあってよかったですね!

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