スポーツで、人生に大きな夢と、毎日に小さな彩りを。立川からアジアチャンピオンを目指す。
皆本晃さま
前身の府中アスレティックフットボールクラブから現在の立川アスレティックFCを支える。海外ではスペイン、カタールなどのクラブでもプレー経験があり、2017年からは日本代表のキャプテンにも就任。2021年には リトアニアW杯に初出場を果たし、現在はFリーグ初の選手兼代表理事を務める。
育ってきたクラブを発展させたい。やるしかない。
――本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。早速ですが代表であり、選手であるという特殊な形態だと思います。ここにはどういった経緯があったのでしょうか?
皆本さま:元々チームは府中にあったのですが、ピッチサイズなどの問題で立川にホームタウンを移すことになりました。そのなかで誰かを社長にしなくてはならない状況で、自分しかいないということになりました。今となっては光栄なことなのかもしれませんが・・・
――その当時の想いは?
皆本さま:将来的に運営側に行くつもりでしたが、正直悩みました。素人の私がやって成功するのかという不安もありました。本当にやっていいのかな、と。
私はこのクラブでずっと育ってきたので、このクラブを発展させたい。であればやるしかないと。損得の計算ではなくて、やると決めてどうやっていくのか、というふうに頭を切り替えました。
――プレーヤーとして続けたかった、という想いもひとつのきっかけとしてあったのでしょうか?
皆本さま:いいえ、この話をもらったときにはW杯にも出てというタイミングだったので選手としてはやりきったと思っています。もちろんとっていないタイトルも残ってはいるのですが、 それよりもやることはすべてやったと思っています。
なので経営者一本に絞ってやっていくことも選択肢としてはあったのですが、ビジネス面で考えたときに経営者一本に絞ってやる方が怖かった、という想いもあります。経営者として素人の自分がそこに入っていくほうが怖かった。
ただ、選手をやりながらであれば他の経営者と差別化ができるのではないかと思いました。幸いにもプレーヤーとしてもなんとかなると(笑)であれば経営者としての皆本晃にとってはメリットだなと思ったので続けることにしました。
プレーヤーは辞められるなら辞めたいです。(笑)でも経営者としてプレーヤーを辞められるほど一流にたどり着けていないというところがあるので、「選手を辞める」ということには至っていないのが現実です。
――代表をすることで選手としても続けられる、またその逆も、といった感じでしょうか?
皆本さま:最初は続けることでメリットがあるということでやっていました。今となってはそこが課題だと思っています。今は選手としても「私がいる立川アスレティックFC」を応援してもらっていますが、 「私がいない立川アスレティックFC」を応援してもらえる体制をつくることが課題です。その体制ができたら辞められると思っています。(笑)
――フットサルファンとしてはその時がくると寂しい気持ちでいっぱいです・・・逆にこの二刀流だからこそ良かった点は?
皆本さま:選手もやっているので現場で思っていることをダイレクトにあげられるところはあると思います。全て自己責任で変えられるのでそこは大きなメリットです。 多くの場合、経営者が現場にきてこうした方がいい、と言っても現場とはかけはなれていることがあると思います。それが私の場合はありません。現場で実際に同じことをやっているし見てきている。だから言えるんです。
――代表自ら体現しているからこそ説得力がありますね。
皆本さま:はい。私たちのチームは他チームよりファンサービスがいいと言われているのですが、それは私自身が選手としてやったうえでこれはやった方がいい、 やらなくてはいけないと感じるからこそ他の選手たちにも要求します。やって当たり前でしょ?と言えるのは私の強みだと思います。
――実際に僕も試合を観戦した際に、コートに貼られているテープはがしに参加させていただきました。こんなに選手と近い距離でできるなんて珍しいなと思いました。
皆本さま:ありがとうございます。テープを剥がすのも意外と時間がかかるので、であれば楽しいイベントにしてしまえばいいと思ったんです。スタッフだけでやると平気で1時間とかかかってしまうところをファンの方と一緒にやれば15分くらいで終わってしまいます。かつファンの方に喜んでもらえて、選手たちとのふれあいになればいいなと。
彼らと一緒に死ぬ思いをして何かに取り組んだからこそできた経験。
――所属当時と今でメンタル面、プレー面での違いや気をつけていることは?
皆本さま:若いころは先輩たちがいたから自由にやってきました。それが、年齢が上がってベテランになったからこそキャリアのピークを迎えている若い選手たちを支援できるように、という姿勢に変わっていると思います。
――自分自身もサッカーをプレーすることがあって、まだまだ若い選手に負けたくないという気持ちがあります。そういう想いよりも若い選手たちに頑張ってほしいという想いのほうが強いですか?
皆本さま:それは絶妙なバランスで・・・こうして話している時間は若い選手が育ってほしいと思っていますが、ピッチのなか、あの線を一本越えた瞬間から若い選手には負けないという気持ちでやっています。 それがなくなった瞬間に私の選手としての時間は終わると思っています。負けたくない、と思ってる自分が負けてほしいと思ってる。でもやっぱり負けたくない・・・試合が始まったらここで話していることとは真逆でスイッチがパチパチ切り替わっていくようなイメージです。
――確かにそこはすごく絶妙なバランスですね・・・そもそもなぜサッカーではなくフットサルという選択になったのでしょうか?
皆本さま:高校卒業したタイミングでフットサルを始めたんですけど、ちょうどフットサルが盛んになりはじめた時期で。サッカーをやっているときから練習の小さい範囲で行う4対4とか3対3のミニゲームの方が好きだったんです。 そっちの方が自分の強みや技術が活きるんじゃないかと。サッカーはとにかく広すぎて関われない時間が多すぎるなと思ってました。でもミニゲームだとそれがない。常にゲームに関わることができる。そっちの方が好きだったのでフットサルを選ぶきっかけになりました。
――サッカーからフットサルになって難しいなと感じた点は?
皆本さま:同じスポーツだと思ってやるとうまくいかない。頭の使い方も体の使い方も違います。でも私はスペインに行ってトップオブトップを見たときに感じたのは、結局サッカーもフットサルも変わらない、 ということでした。上にいけばいくほど、最後は結局ボールを蹴ってゴールに入れるスポーツ、それ以上でもそれ以下でもないと感じました。海外の選手はパススピードも早くて、なのにピタッとボールを止めるし、ダイレクトでシュートも打てる。 トップレベルではそれが当たり前だし、サッカーもフットサルにも言えること。だから足でボールを扱うスポーツである以上、そこは変わらないなと思いました。
――まさに1周まわって、ということですね。
皆本さま:結局はそうなんです。戦術とかいろいろありますけど、技術という土台のところを相当レベル上げておかないと最終局面では勝てない。 だからこそ年齢を重ねて若い選手や育成年代への育成に携わったときに大前提としてそこを大事にしないといけないなと思いますし間違っちゃいけないなと思っています。
――大学を卒業されてからスペインでもプレーされています。日本との違いや学んだことは?
皆本さま:そもそも文化が違うので人の考え方が全く違います。特にスペインという国は個人の自己主張が強いです。向こうの人が自分に合わせてくれることもないので、その環境にアジャストしなければいけませんでした。 その環境で過ごしたので自分も自己主張の激しい人間になっちゃったんですけど(笑)
彼らからしたらそれが普通なんです。でもお互いに主張するからこそ相手の意見を聞くことに関してもオープンなところがあります。自分の主張はするけど自分の主張が100%正しいとは思っていない。だからこそ自分の主張が言いやすい。 自分のことも疑っていないし人の意見も否定しないんです。でも目的ははっきりしてるから水面下での分裂もしない。
そういう文化の違いはかなり感じたのでフットサルというよりも人生や人として、という部分でいい経験ができました。これは旅行や留学では経験できないことで、生活をして、彼らと一緒に死ぬ思いをして何かに取り組んだからこそできた経験だと思っています。
W杯では「いつものプレー」はできない。そのなかで自分になにができるか、100%の基準をあげる。
――2017年からは日本代表のキャプテンに就任されました。アジアカップ、リトアニアW杯など世界の舞台で日本代表そしてチームのキャプテンとしてどんなメンタリティで挑まれたのでしょうか?
皆本さま:今振り返ると特別な経験だったと思うし、いろんなものを背負って挑みました。フットサルというマイナースポーツを広めるために、世界の舞台で日本代表が勝つか負けるかというのは今後の競技の未来にダイレクトに関わってくることだと思います。 そういった責任をもちながらやれたというのは、プレッシャーはすごかったですけど、幸せだったなと思います。
――普段のFリーグの試合とでは当然雰囲気も違ったと思いますが難しさはありましたか?
皆本さま:そうですね。ここに懸けてきた想いは特別でした。それは自分だけじゃなくて仲間もそうだし相手もそう。それが集約された重たい空間でした。いつものプレーなんてできないしできる人もいない。 それが普通なんです。だからできないことに対して悩むんじゃなくて、地力をつけるしかない。80%でもいいプレーができるように自分の100%を上げるしかないんです。100%の基準を上げておけば例え80%だったとしてもまわりからみたらいいプレーになる。 そういうことが起きる場所だなという難しさはありました。
でもそういう世界なので、そのなかで自分に何ができるか、になってきます。経験を積んでくるとそういうものという前提があるので「なんでうまくいかないんだ」と思わなくて済む。 いつも通りのプレーじゃなくて今できることをしっかりやる、それがいいプレーにつながる、という経験ができました。
――大会後、どんなことをチームに持ち帰りましたか?
皆本さま:自分がW杯に出たからと言って、こうした方がいい、ああした方がいいよ、ということは言ってきませんでした。その代わり、先ほど言ったような「基準」というところを高く持ってその基準でやるようにはしました。 そうすることで何かを感じ取る人もいただろうし、その感じたものを活かして次のステップに進んでくれたら十分かなと思います。
子供たちの憧れの存在に
――ここからアスレティックFCについてもお伺いします。「スポーツで、人生に大きな夢と、毎日に小さな彩りを」という理念を掲げていますが具体的にどのような取り組みをチームとしてされているのでしょうか?
皆本さま:夢というところで言うと、やっぱり子供たちの憧れになるということだと思います。もちろん試合で活躍することもそうですが、「スター」であることに力を入れるのではなくて、 自ら子供たちのところに出向くとか、自分たちから応援してもらう機会をもつことが大切だと思っています。
プレーを見てもらって、一緒にボールを蹴ればすごいと思ってもらえるのは当たり前で、そうでなければ選手である意味がないんです。でもそれが届いていないのであれば、待つのではなく自分たちから見に来てもらって、 一緒にボールを蹴りに行って「すごい」と思ってもらえる、知ってもらう機会を作らなければ届かないことだと思っています。
――子供たちにとってはとてもいい経験になりますね。
皆本さま:そうだといいなと思っています。そしてもう一つの彩りというところでは街の皆さんにきっかけを与えられる存在になっていきたいと思っています。 私は幼稚園の運動会が見てて一番面白いスポーツだと思っているんです。スポーツのレベルで言えば転ぶか転ばないか、真っすぐ走れるのかどうかというレベルなんですけど、自分の子供が出ててあれほど熱くなれる、応援できるスポーツはないなと。
やっぱり原点はそこだと思っていて、知ってる人が頑張ってる試合の方が興味がわくし応援しようと思うじゃないですか。そういう存在になることを目指しています。だからこそ街のイベントに参加して接点をもつということも大切だと思っています。 そうして作った接点が会場でお客さん同士で繋がって、また新しい接点ができていく、そうして街がもっと盛り上がる、そのための「きっかけ」が私たちであれたらいいなと思っています。
――それは私自身も昨シーズンの試合を見ていて感じました。今まで好きだから見ていたアスレティックと、「知っている」人がいるアスレティックでは熱量が違ったと思います。 試合を見ていて他チームよりも「体を張る」「リスクを負ってでも挑む」という姿勢を感じるのですが、チームとしてそう言ったものも含めて目指しているフットサル像は?
皆本さま:原則として私たちのチームは全員で体を張ってハードワークをしてというところはすごく大事にしています。それがやっぱり何よりも共感をうむと思うんです。 テクニックがどうこうというのも大前提としてはあるのですが、やっぱり最後まで諦めずに戦い続けるというところは常に大事にしています。それができないとうちの選手としては難しい。
そのなかで個人の能力も大事にしてタレントを活かすことができたらと思います。逆に特長がない選手はうちでは活きないと思っています。何かに秀でていないといけない。
――なるほど。攻守においてバランサーと呼ばれる選手は逆に難しいということですね?
皆本さま:そうですね。気の利く選手というタイプはうちでは埋もれてしまうと思います。入れたとしても狭き門。何か一芸がないと。それは守備が強いでもいいし、シュート力でもいい。 そういう選手が好きなんです。そうじゃないとトップまでいけないと思っています。全員守備だけ最低限やるけど、あとはなんかやれ!という精神です。(笑)
――試合を通してオーガナイズされている印象があったので意外です。でもそれは全員守備という前提があったからなんですね。確かにキャラクターはかなり強くてそこが面白いところだったなと思います。
皆本さま:チームのなかで一人一人の特長が分かってるから、その特長を活かせるように全員が動いてあげる。チームとしてその意識は強いと思います。 シュートがうまい選手がいれば最後はその選手に任せますし、足の速い選手がいればその選手の前にボールを出してあげようとか。それが結果的に連携をうんでいるんだと思います。
勝ち続けるクラブになることで応援する価値のあるクラブに。
――昨季はリーグ戦、カップ戦ともに3位、全日本で準優勝でした。チームとしてはどんなシーズンでしたか?
皆本さま:いいシーズンだったなとは思います。結果を見れば全体を通して3位以内に入れました。2年連続でそういった結果を残せたシーズンはなかったのでそういう意味では良かったなと思います。
ただ、いいところまでいけたからこそタイトルを取らないといけないと思っています。最後のところで勝つか負けるかというのは大きな違いが出ると改めて感じたシーズンでもありました。
――チームの結果としてはアジアチャンピオンを掲げていらっしゃいます。そのために今後どのようなことがチームに求められているとお考えでしょうか?
皆本さま:一番は資金力だと思っています。リーグ戦で1回優勝するだけならそこまで難しいことではない。でもやっぱり勝ち続ける、となると資金力は課題になってくると思います。 もちろんお金があるから勝てるなんてことはありませんが、あるからこそいろんなところに投資できて、いろんなところを整えられる。だからこそ勝ち続けることができると思っています。
アジアチャンピオンになるには常に日本一でなければならない。勝ち続けなければいけない。それは応援する価値のあるクラブでなければならないということです。
――アジアチャンピオンになるアスレティックを楽しみにしています。最後に、アジアチャンピオンのその先、というのは何かイメージされているのでしょうか?
皆本さま:私の仕事はそこまでかなと思っています。それは結局街づくりだと思うんです。街の人を巻き込んで街全体で自分たちの理念が叶えられた状態でなかったら、アジアチャンピオンにはなれないと思います。 その理念が叶えられて実現できたとしたら次のステップに進むんだと思います。
こういうクラブや街が日本全国にもっと増えたらいいなと思いますし、もしかしたらそれはフットサルのクラブではないかもしれません。でもスポーツを中心にした街づくりが今の自分のやりたいことでもあるので、それが完成したら次に託して私は次のステップに、ということは考えています。
――今季こそ優勝するアスレをみたいです。これからも応援しています。本日はありがとうございました。
皆本さま:頑張ります!ありがとうございました!
外貨両替ドルユーロは立川アスレティックFCを応援しています!
私たちはファミリーパートナーとして立川アスレティックFCを応援しています。日本と世界の懸け橋になることを目指し、アスレティックFCがアジアチャンピオンになることを夢見て、これからも全力で応援してまいります!