古いものから新しいものへの発展。価値のないものから価値のあるものへ。

徳島佑さま
ヨーロッパ古着「アンコール」そしてユーロミリタリーを取り扱う「militaria」を高円寺にオープン。自身でヨーロッパをまわりこだわりのアイテムを買い付けている。
すべてに意味と意図がある。
――現在の主な活動について教えてください。
徳島さま:古着屋2店舗を経営していて、家具のギャラリーを1つやっています。家具の方はゆっくり僕1人でやっていて、ヨーロッパとインドの家具を取り扱っています。
――もともとファッションのなかでも古着がお好きだったのですか?
徳島さま:アパレルのデザイナーを4年くらいやっていたなかで、デザインソースの95パーセントぐらいは古着からでした。それを組み替えて新しく作るみたいなことをやっていて、そこでどっぷりハマったという感じです。
――古着の魅力はどういったところにありますか?
徳島さま:僕が好きなのはミリタリーウェアやワークウェアといったもので、おしゃれで着るというよりは丈夫な素材を使って動きやすく作られた誰にでも合う服が多いです。
そういった実用的な服は着れば着るほど、見れば見るほどすごいなと思います。ひとつひとつ細かく作りこまれていますし、パターンワークやデザインもおしゃれに見せるためでなく、用途としてのデザインが優れています。
なんでここはこうなっているんだ、という問いに必ず答えがあるんです。狩猟をするためのハンティングジャケットであれば、銃をかまえるために脇のところは余裕をもたせるとか、動物の血がつきにくいような素材を使うとか、そういったものが全部計算されている点がすごいと感じますね。
――意味のないデザインがひとつもないんですね。
徳島さま:そうなんです。全てに意味と意図があって、それが何も知らなかった自分にとってすごく新鮮でした。
――古着界隈ではアメリカ古着、ヨーロッパ古着と大きく分けられることがあると思います。それぞれの違い、特色は何ですか?
徳島さま:古着の成り立ちからするとアメリカから始まっているとは思うのですが、90年代でまずアメリカ古着がブームになりました。ヨーロッパ古着はそこから20年くらい後になって入ってきたイメージです。
日本での流行り方で言えば、アメリカ古着がベースにあって変化球的にヨーロッパ古着があるという感じがします。
――アメリカ古着はカジュアル、ヨーロッパ古着はモダンというイメージがありますがその点はどうですか?
徳島さま:アメリカは多人種なのでいろんな体型の人に合うようにおおざっぱに作るという点はあります。細い人にもがっちりしている人にも合うようズドンと作られている。
一方ヨーロッパでフランス軍のものだとそこまで身長差がないのでシュッとした作りになっています。各国から美意識を感じるところが面白いです。
――ヨーロッパ古着の魅力はどんなところにありますか?
徳島さま:いろんな楽しみ方があるなと思います。アメリカ古着と言えばデニムだと思うのですが、デニムのもととなったデザインは意外とフランスにあったりして。そういった源流が見え隠れするところが好きですね。
――特に好きな年代・軍・国のアイテムはありますか?
徳島さま:1930年~1960年代が僕にとってのゴールデンエイジだと思っています。この年代の服は半工業製品といった感じになっていて試行錯誤感やデザインの移り変わりが見られます。
ディテールがなくなっていって、ここまではこだわっているけど、ここからは簡素化されているといった変化が多い年代だなと思います。
――古着以外で影響を受けた人物・文化・街はありますか?
徳島さま:骨董屋界隈になるのですが、古道具坂田さんですね。店主の坂田さんという方の思想がすごく好きです。審美眼というか、良いものも知っていらっしゃいますし、何でもないものでも「これすごくない?」と提案できる方です。
例えばドゴン族というアフリカの少数民族がいて、彼らが使用していた家の扉だったり、もう道具としては使用できない釣り具を置物として空間に落とし込んだり。
そういった提案を手を変え品を変えたくさんやられていて、そんな考え方もあるんだと衝撃を受けました。
それから一時期、坂田さんの影響を受けた骨董屋さんをたくさんまわりました。そこで得た新しい考え方や発見を古着というフィルターを通して作ったお店が今の「アンコール」そして「ミリタリア」です。
――ジャンルとしては全く別物だと思うのですが、その骨董屋さんのどんな要素を今のお店に取り入れたのでしょうか?
徳島さま:ヨーロッパのミリタリーウェアは価値がほぼゼロでした。それでも各国面白いアイテムがたくさんあってこれはもったいないなと思ったんです。
そこでミリタリーウェアをファッションとして編集していったらいいのでは?と思ってミリタリーミックスじゃなくてミリタリーに特化することで各国、各年代、各軍から自分が良いと思ったものを提案する、ということを始めました。
売って終わりではなく、そのあとかっこよく着てもらいたい。

――古着屋をはじめたきっかけは何でしたか?
徳島さま:デザイナーをやっていた頃から自分のブランドをやるか、お店をやるか迷っていました。
それでデザイナーをやめたあとに古着屋で働き始めたのですが、そのときに3.11の震災が起きて危機感を覚えたんです。これはもう何でもいいからやらなきゃと思って、とりあえずヨーロッパに1ヶ月行きました。
――何かノウハウだったり現地の人との繋がりはあったのでしょうか?
徳島さま:全くないです。とにかく現地で情報を集めて、いろんな場所に行ったり人と話したりしてツテを作っていきました。もう行き当たりばったりです。
当時はスマホもないのでGoogleMapもありませんでした。雑誌を読んでこの地域にアンティークのマーケットがあるらしいぞ、と思って行ってみたらやってないなんてことばかりでしたね。
それでも何とかなったので、これはいけるんじゃないか?と思ってお店を始めることにしました。
――そして1号店のアンコールさん、2号店のミリタリアさんができるわけなのですが、それぞれどんなお店でどんな違いがありますか?
徳島さま:アンコールの方はフランスのワーク、カジュアルウェアを提案しています。ミリタリアは名の通りミリタリーウェアを楽しむお店です。
アンコールの方が幅をもたせていて、ヴィンテージをがっつり取り扱う時期もあれば、年代の浅いレギュラーと呼ばれるアイテムをたくさん取り扱うときもあります。
――店名にはどんな思いが込められているのでしょうか?
徳島さま:アンコールはフランス語だと「おかわり」という意味があります。音楽だと「もう一回」という意味合いがあったり、古着をもう一回という意味も込められています。ミリタリアは超ストレートですね。
――それぞれ大切にしている世界観や空気感はありますか?
徳島さま:物の並べ方や選ぶ洋服は当然雑に選ばないようにしています。必ず自分で着るようにしていますし、サイジングやコンディションは他の古着屋さんの3倍4倍は気を遣っています。
――それはすごくお店のアイテムを見て感じました。新品と言っていいくらいコンディションの良いものが並んでいて、ダメージが目立つものが全くないですよね。
徳島さま:もし汚れやダメージが目立つものを選んでくる場合は理由付けがないと選んできません。それが味かどうか、ダメージが活きているかどうかを重視しています。
――それが活きているかどうかの境界線はどのようにひいていますか?
徳島さま:山手線に乗れるか乗れないかですね。ダメージのある洋服を着ていること自体は悪くないと思いますが、やっぱり僕自身が好きではないので。
ヴィンテージを提案して売って終わりというよりは、そのあとかっこよく着てもらいたいという想いがあります。そう考えるとやっぱり山手線に乗ってておしゃれに見えるかどうかという基準は大事だなと思います。
――1号店がオープンしていろんなことがあったと思いますが印象的なこと、今でも覚えているお店での出来事はありますか?
徳島さま:アンコールが10周年を迎えたときですね。1年半かけて商品を準備して、その日に一気に出したのですが、オープンからクローズまで列が絶えないということがありました。前日から並んでくださったお客さんもいて、その光景は今でも忘れられないですね。
――そういったなかで2号店がオープンするのですが2号店についてはどういった経緯があったのでしょうか?
徳島さま:そのときはヨーロッパ古着ブームというか小さなブームが起きていたタイミングでした。1号店は結構調子が良くて、それでもこれはいつか終わるなと思っていたので、じゃあ次なる手をということでミリタリアをオープンしました。
――今後ミリタリア、アンコールともにどんなお店にしていきたいですか?
徳島さま:古いものから新しいものへ発展させていきたいですね。ずっと無地がここ数十年トレンドになっています。でもそればっかり着ているとつまらなくなっちゃうので。
だからこそ柄物やレザーといった、30代になって着ることをやめていたアイテムをもう一回提案していきたいなと思っています。
――以前お会いしたときに「ある程度洋服を見ていくとそのうち変なものがほしくなってくる」と仰っていたことが印象的なのですが、具体的にどういうことなのでしょうか?
徳島さま:例えばデニムとか誰もが通るようなアイテムを究極まで追求していくと、お金払って一番高いものを買った人が勝ちみたいになってくるなと感じています。
それで楽しい人はいいと思いますが、僕としてはつまんないなと感じていて。
今までヨーロッパヴィンテージを研究していったんですけど、自分自身が飽きてしまった時期もあって、新しいことをしたいと思ったときに、あまり注目されていない80年代90年代のヨーロッパ古着に挑戦しています。
この年代はバブルの年代なので、もうデザインがすごいんですよね。今では考えられないような柄や色を使っていてそれが逆に面白いなと感じます。
――新しいモノやコトへの挑戦みたいな意味合いもありますか?
徳島さま:そうですね。人間の脳は新しい感覚とか経験をするときにドーパミンが出たりすると思います。感度の高い人はそういう新しいものに触れると興奮してくれるので、そういう人たちを狙ってパスを投げています。
これがかっこいいんだよといきなり答えを提示するのではなく、ヒントを散りばめながらそっちのシンプルな服もいいけど、こっちの扱いずらい服も上手に扱えたら楽しくないですか?という距離感でいたいですね。
――その徳島様の距離感にはどういった意図があるのでしょうか?
徳島さま:先ほどの坂田さんという方の影響を受けている部分があります。まずはそのモノと向き合ってみてほしい。ハンガーにかけてコーディネートにして提案することもあれば、それを単体で提案することもあります。
いろいろ試していくことで、神経をとがらせて見てくれている方や、感度の高い方に自分たちの商品が届いてほしいと思っています。
面白い人が作ったものを濃縮したお店を。

――商品の買い付けは実際に海外へ行かれているということなので、ここからは海外でのご経験についてもお聞かせいただければと思います。仕入れに行く主要国はどのあたりですか?
徳島さま:フランス、ベルギー、イタリア、ドイツ、オランダ、イギリスです。どの国も面白くていいモノが多いです。
――いろんな国に行かれていますが、各国でどういった点に違いがあるのでしょうか?
徳島さま:国境をひとつまたぐと考え方も人種も何もかもが違います。そこが本当に面白いですね。フランス、イタリアは自我が強いわりに適当な人たちが多いです。逆にオランダやドイツはやりやすいです。
ドイツは移動がすごく多くて1日で1000km移動することもあります。
――仕入れで絶対に妥協しないポイント、心掛けていることはありますか?
徳島さま:売れるかどうかわからないけど何か引っかかる物と出会うことがあるので、そういったものも入れるようにしています。
――そこにはどういった狙いがありますか?
徳島さま:挑戦ですね。買い付けで10%~15%は新しいことをしようと思っています。自分の頭で処理しきれていなくても可能性を感じるものを提案するようにしています。
売れないかもしれないけどやりたい、と思うものを見過ごしたくないなと思っています。
逆に使い古されたもの、やりつくされたものを10%~15%捨てるという作業でもあります。

――その作業をして良かったなと感じる場面はどんなときですか?
徳島さま:アンコールの方ではこの夏ヴィンテージを1枚も出しませんでした。今までヴィンテージで15年くらいやってきたので勇気がいることでしたがやって良かったなと感じています。
ヨーロッパにも高いだけや古いだけのものばかりじゃなくて、モダンで新しいもののなかにも面白いものがあるよと提示できたんじゃないかなと思っています。
――ヴィンテージを出さなかったということは、現地で新しいものを買いつけて出したということですか?
徳島さま:80年代~2000年代のまだ価値のついていないものですね。アメリカ古着であればその年代も既に価値がついているのですが、ヨーロッパではまだそこまで価値がついていません。
――ヴィンテージは出会い、めぐりあいのイメージが強いのですが、海外での仕入れで出会った印象的なアイテムはありますか?
徳島さま:僕はテーラードジャケットが一番好きなんです。その先祖にあたるサックコートと呼ばれるアイテムがあるのですが、それを初めて見つけて着たときは衝撃的でした。
動くには少し窮屈さはあるのですが、デザインの配置やバランスを見てもエレガントでかっこいいですし、ブランド物と見違えるくらい完成されていました。
取り扱っているお店も周りになくて「これは何なんだ?」という衝撃的な出会いでした。
そのあと洋服に詳しい方に聞いてみたら、アメリカでサックコートと呼ばれていることを知って、その出会いが店をつくるきっかけにもなりました。
――海外での仕入れでいろんな人やモノ、場所や文化に触れるなかで学んだことやご自身のなかで価値観が変わったようなそんなエピソードがあれば教えてください。
徳島さま:フランスはとにかく自己中心的でみんなが好きなように生きています。それが個人的にとても衝撃でした。
好きなものをはっきりさせるとか、思っていることを伝えるとか、日本ではハードルの高いことも簡単にやってしまう文化が逆に新鮮ですごくいいなと思いました。
――文化の違いから受ける衝撃は本当に大きいですよね。
徳島さま:みんなが当たり前にデモを起こしたり、不平不満も公に言っているんです。それを真似しようとは思いませんが生き方は真似できるなと思っています。
例えば家のなかも楽しむための工夫がすごくされています。家の一番いい場所にテレビを置くのではなくて好きな絵やポスターが置いてあるとか、そういう美意識の部分が新鮮でかっこいいなと思いました。
多民族国家ということもあって、文化の違いに対しても何でそうなの?という突っ込んだことも聞いてきます。日本ではタブーとされていることですが、こういう文化があるからこそみんなフレンドリーですぐに家族同然の付き合いをしてくれる人が多いですね。
――徳島さん自身の今後のやりたいこと、夢はありますか?
徳島さま:クローズドなお店をやりたいなと思っています。来るのが面倒くさいお店です。これだけ情報がオープンにされている世界になって情報自体に価値がなくなってしまうなと感じています。
個人的には面白い人が作ってるものやお店が面白いと思っているので、そういったものを濃縮したお店をやってみたいと思っています。場所も駅近じゃなくて離れていて、かつアポイント制みたいな。
それでも来てくれる人はきっと感度も高いと思いますし、そういった人と出会えるのが楽しみですね。
――徳島さま、本日はありがとうございました。












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